こんにちは!メドピア歴1年、Railsエンジニアの小林です。
今回のブログでは、5月31日〜6月2日に仙台で開催されたRubyKaigi2018に全日参加してきましたので、その感想をお届けしたいと思います。
このブログを書いた人の背景
私はメドピアに入社することになって初めてRubyを書き始めました。
昨年9月に開催されたRubyKaigi2017時はまだRubyを書いて数ヶ月という状態だったのですが、実はそのときも参加しており、今回のRubyKaigi2018は2回目の参加になります。
なぜ前回、まだ右も左も分からない状態で参加したかというと、自分が仕事で一番使っているプログラミング言語の大規模な国際会議が日本国内であるのであれば、外から盛り上がりを見ているよりは実際に体験してみたいと思ったからです。
また、Rubyを書いている仲間を見つけて交流したいという気持ちもあり、参加しました。
今年は、去年のそんな私の姿が評価されたこともあってか(?)、RubyKaigiへ行きたいと表明したメンバー全員分の参加費・交通費・宿泊費が会社で補助していただけることになりました!
本当は見たセッションすべての感想を書けたら良いのですが、長すぎてまとまりがなくなってしまいそうなので、本記事では特に印象が強かった部分だけを書かせていただきます。
個々のセッションについてもう少し知りたい方は、RubyKaigi中に参加したメンバーがそれぞれ見たセッションを速報としてブログにまとめましたので、こちらをご参照いただければと思います。
(2日目以降のブログは上の記事にリンクがありますので、辿って下さい!)
速報性を大事にしていたため、突っ込みどころもあるかと思いますが、これはおかしいだろうという箇所がありましたら、ご指摘いただければと思います!
Matz基調講演について
1日目で特に印象に残ったことは何と言ってもMatzのキーノートです。今回は諺についてのお話。
Matzが大事にしている諺として下記の3つが挙げられていました。
- 名は体を表す
- 時は金なり
- 塞翁が馬
名は体を表す
Rubyのカンファレンスに参加するようになってから、Matzのお話を聴講したことは何回かありますが、そのたびにMatzは毎回「名前重要」という話をしているということに気づきました。
名は体を表す、といいますが、確かにRubyがRubyという名前ではなかったらその言語に対して持つ印象も違っただろうと思います。持つ印象が違えば、コミッターやユーザーがその言語をどのように扱うかも変わってくると思います。そうであれば今のRubyとは全く別の言語になっていたかもしれません。
正しい命名付けを行うことは、正しく概念を理解していることでもあります。良いプログラマーは、良い命名者でもあります。
「概念がどういう局面で使われるか十分に理解していれば比較的簡単に名前をつけられる」「よいプロジェクトの名前はコミュニティの旗印になったり、求心力になったりする」、とMatzは説いていました。
ちなみに、もし今のネット社会の中で新たに言語の名をつけるとしたら、Rubyはググラビリティが悪いのでつけないだろうということでした。
確かにMatzが2014年に作ったもう一つの言語であるStreemは、実在する単語を少しいじったものであるので、ググればすぐMatzのリポジトリが出てきてググラビリティが良いですね。ちなみに某言語…おっとだれか来たようです。
時は金なり
時間は、誰にでも平等に1日24時間与えられています。時間をどう使うかは、どういう人生を歩むか、を決定づけます。
プログラミングで自動化できることは自動化していったほうが生産性の高い人生を歩むことができると思います。
Rubyには便利なメソッドがたくさんあるので、時間を有効活用するのを助けてくれる傾向があります。
また、プログラミングにおいては、問題が発生したときに早く解決できたほうが時間の短縮になります。問題が自分ひとりでは解決できないこともあると思いますが、そういった意味では「ほとんどの人にとって『質問に答えてくれる人が身近にいる言語』が一番いい言語」でしょう。
Rubyはコミュニティが活発なので、質問に答えてくれる人を比較的見つけやすい環境であると言えると思います。
処理速度については、Rubyは遅いと言う人も居ます(Rubyでググると「Slow」が候補として上がっています)が、現在もコミッターの方々がパフォーマンス改善を続けています。
書きやすさと処理速度についての良いバランスを取っている言語だと思います。
塞翁が馬
塞翁が馬というのは、中国の故事『准南子』に出てくる小話のことで、「人間万事塞翁が馬」とも言われているかと思います。
内容は、人生には良いことがあってもその後悪いことが起きることもある、悪いことがあってもその後に良いことが起きることもある、先のことはわからない、というお話です。
読む人によっては、良いことがあっても浮かれすぎるな、悪いことがあっても落ち込みすぎるな、という解釈もあるかと思います。
Rubyは多くの人に使われる言語となりましたが、先のことはわかりません。
他の言語に取って代わられ、Rubyユーザーが縮小してしまう未来もないとは言い切れません。
そんな中でも今後も時代に合わせた進化を続けることで、時代に合わせたRubyのあり方を模索していきたい、といった趣旨のお話でした。
私も実は個人的に以前からこの諺を気に入っており、人生そのものだと感じているため、座右の銘の一つとしておりました。
Matzの考え方には深く頷ける部分が多くあり、そのように強い信念、理念を持った言語設計者が作った言語だから多くの人に広まったのだなあと改めて思いました。
--
また、セッションの締めにはMatzは「Rubyに『言語仕様として』型が入ることはない」とおっしゃっていました。型推論についてが今議論されていますが、それはあくまで推論であるということです。
Rubyを使う人は型を使いたくない人も一定数いると思うので、もし言語仕様としてそこを変えてしまうとしたらかなりの既存のユーザーが置いてけぼりになるのではないかと思います。
時代の流行を気にしながらも、Rubyとしてそぐわないところは無理に採用しないというMatzの意志を感じました。
Ruby Committers vs the Worldについて
2日目の締めはRuby Committers vs the World。
壇上にRubyコミッターが勢揃いする光景は圧巻です。
コミッターたちが、寄せられた質問などについて答えてくれました。
このようにRubyコミッターが勢揃いすると、Matzの意見が必ずしも通っているわけではないということに気付かされます。
特にMatzが最近Ruby2.6に追加したというエイリアス「then」の命名の良し悪しについては熱い議論が交わされていました。
普段Rubyコミッターたちがどのように議論してRubyを改善・機能追加しているかの様子が垣間見れたような気持ちになります。
Matzが愛されて(いじられて?)いる様子には、ただのいちRubyユーザーである自分も何だかつられて笑ってしまいました。
セッションの見かたについて
今回2回目の参加でしたが、去年の1回目の参加後は「なにがなんだかわからない…参加費を無駄にしてしまったのでは…」と絶望して帰ってきたのですが、2回目に参加してみると「あれ、もしかしたら前回の反省がちょっと生きているかも、少しは成長したかも」と思いました。
具体的には、「すべてを1回でわかろうとしない、絶望しない」というところが大事なポイントかもしれません。
イベントに参加する人は、Rubyの内部実装やC言語を深くわかっている人だけでなく、私のようなRailsを使っているだけというWeb系エンジニアも多くいると思いますが、そんな中でも「知識不足ゆえにまったく理解できなそうなセッション」と「Web寄りやビジネス寄りで、現時点での知識でも少しは理解できるところがありそうなセッション」があると思うのです。
割り切って「現時点で少しは理解できるセッション」に絞って聞いてみるのも戦略としてありかなと思いました。
(もちろん自分の知識不足に喝を入れるために全然わからないセッションを聞きたい、という人はそれもアリかと思います)
また、セッションは全部の時間で聞こうとすると1日に6~7個聞くことになると思いますが、どれも全部内容が濃く、それぞれを深く理解するためには、無理に全部の時間に聞かなくても良いと思いました。
ありがたいことに、最近はセッションの動画がのちに公開される(今年も公開していただけるようです)ので、会場では体調を整え、自分の体力と相談しながら適度に休憩を入れるのも、長い3日間を乗り切るポイントかなと思います。
ステッカーについて
メドピアは今回ゴールドスポンサーとして参加したので、ステッカー置き場にステッカーを置かせていただきました。メドピアのキャラクター、メドベアちゃんがRubyと戯れている様子がステッカーになっています。
今後Ruby関連のイベントでスポンサーする機会があればそのときにも持っていくと思うので、今回もしもらい損ねたという人がいましたら、その機会に是非!
英語について
セッションの大半は英語なため、英語力に課題を感じました。RubyKaigi直前は英語力を高めるため下記のPodcastを聞いてみた*1のですが、それでもやはりセッションを1回聴講しただけで理解するのは難しいなと感じました。
Ruby Rogues Archive | Devchat.tv
のちにセッションの動画が上げられたら、繰り返し見て、理解を深めたいと思います。
観光について
RubyKaigiは、東京開催以外だと地元の美味しい料理を楽しんだり観光を兼ねられるのが1つの魅力でもありますね。
2日目の夜は、会社のメンバーみんなで牛タンを食べてきました。
予約していたお店は行ったことがある人はおらず不安でしたが、結果的にとても美味しく皆満足していました!
ちなみに最終日翌日は日曜でしたので、個人的に仙台周辺を観光してきました。
時間のある方は松島まで行かれた方もいらっしゃるようですが、私は以前から行ってみたかった仙台城跡を見てきました。
城跡なので実際にお城の中に入れるわけではないのですが、伊達政宗公の騎馬像の実物を目の前にしたときは改めて「仙台に来たんだな〜!」と感じました。
仙台城跡まではバスで行くこともできましたが、国際センター駅から歩いていくと傾斜がある山を少し登ることになり、運動不足気味なエンジニアには適度な運動になるかもしれません!(女性や子供でも登れていたので、それほど苦しいレベルではないと思います)
全体を通して
今回も、RubyKaigiにはコミッターからRubyを最近書き始めた人まで、たくさんのRubyを使う人が参加していました。
そんな中で、自分がお話させていただいた中では「RubyKaigiに一度参加してみたけれど、自分の目指す方向性はRubyを極めたいわけではなくビジネスに使いたいだけだった」と改めて認識する方がいらっしゃったり、「参加してみてもっとRubyの内部実装を知りたくなった、C言語を勉強したくなった」という方がいらっしゃったり、参加した方の分だけそれぞれの感想があり、それぞれ素敵だなと思います。
セッションを聞くことも楽しいですが、このようにたくさんの方がそれぞれのRubyとの関わり方をしているのだということに思いを馳せられるのもRubyKaigiの良いところだなあと思いました。
セッション以外にも、休憩時間にもブースを見て回ったり、ペアプロの様子を見たり、サイン会があったり、朝食やお弁当を各スポンサーさんに出していただいたり、セッション終了後は1-3日目それぞれPartyに参加できたりと盛り沢山な内容で、Kaigiでもあり、お祭りでもあるような3日間でした。
個人的には、去年は知り合いが少なく少し寂しかったのですが、今年は会社のメンバーがたくさん参加したので、あまり寂しい思いをすることがなく過ごすことができました!
また、同じコミュニティに顔を出し続けると少しずつ知り合いが増えてきて、いろいろな方とお話できるようになり、前回参加したときより少しではありますが自分がRubyistな方々と近づけたのかなと思いました。
来年は福岡、4月18〜20日の開催とのことです。来年も多くのメドピアメンバーが参加し、また多くのRubyistと交流できる会になれば良いなあと思っています。
*1:理解したとは言っていない